本研究は、日本の国際物流業がロジスティクス対応からサプライチェーン対応に移るプロセスにおいて、どのような競争優位を達成しているのかを、主としてアジア物流に注目しつつ、実証的に論じたものである。 第1章は荷主のロジスティクス戦略の高度化とは、物流・ロジスティクス・サプライチェーンというように、この戦略が製造業・流通業のビジネスモデルそのものと融合進化するプロセスであることを論じている。 第2章では、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいて展開された我が国企業の海外事業活動のロジスティクス機能とその成果の関係を、繊維、一般機械、電気機械、輸送機械の4業種につき対比考察して、その地域特性を分析している。 第3章ではアジア立地企業の対米物流構造の分析を通じて、日本企業のアジアにおけるロジスティクス戦略拠点、の構築にどの程度のグローバル整合性が認められるのかを解明している。 第4章では、国際海運物流システムがもつ戦略の二面性、つまり複合輸送システムという成熟したサービス無差別戦略と、貨物そのものの発生環境に対応する革新的なサービス差別化戦略、の同時的展開に注目している。 第5章では、日本の拠点港湾である神戸港と大阪港の行動メカニズムを解明して、今後の物流改革のベースを提供している。 最後に第6章ではダイナミックに進行する海運物流と空運物流の競争と補完の状況がプロダクト・サイクル理論を応用した両モードの物流シェア推移に関わる仮説と整合するように展開されている事態に注目して、この仮説が日本の輸出物流のドライバー機能を現実に果たし得ることを推論している。 このように本研究はグローバル化・情報化・規制緩和を背景にした物流業と製造業・流通業との相互交流と対話の中からいくつかの新たな戦略転換の萌芽を浮き彫りにし、日本物流業のグローバル競争優位が展望できるように努めている。
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