研究概要 |
本年度は,第一に,水平的競争制限に対する具体的な政策問題として,最近の日欧米における航空産業で生じた略奪価格問題に対する政策の整理と検討を行った.これは,柳川隆著「航空運賃自由化後の運賃介入」と題する論文となった.第二に,水平的競争制限の政策の理論的分析として,課徴金制度のカルテル抑止効果と望ましい課徴金制度について研究を行った.これは,柳川隆,吉野一郎著"Surcharge and Cartel Deterrence,"という論題として,Second International Conference of the Japan Economic Policy Associationで学会報告された。第三に,水平的競争制限に対する政策の基礎理論として,競争と市場構造(特に,市場占有率)との関係について研究を行い,柳川隆著「競争と構造・成果」という論文となった。さらに,その理論を水道メータ市場に具体的に適応した研究として,柳川隆著「市場占有率と市場における競争状態」という論文となった。第四に,水平的競争制限の元となりうる市場集中について,DRAM市場の継続的調査を行ったのが,吉野一郎著「DRAM市場における世界的な寡占の動向」である。 以上のような新たな研究に加え,本年度は本研究課題の最終年度に当たるため,これまでの研究成果の整理・再検討と集大成を行った.まず本研究課題の実施期間中に発表された論文と学会報告原稿,および海外調査のヒアリング報告をまとめて,本研究課題名の「水平的競争制限の経済政策」と題する全216ページの研究成果報告書をまとめた.また,本課題実施期間中に書かれた論文に,それ以前の研究成果もまとめて,柳川隆著『産業組織と競争政策』(勁草書房刊)として一冊の書物にまとめた。
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