石油価格は湾岸戦争(1990年)後低迷し、98年第4四半期には一時的に1バレル10ドル割れを起こしたが、OPEC(石油輸出国機構)は相次ぐ減産によって相場の建て直しを図り、短期間ながら35ドル以上に押し上げるという予想外の成功を収めた。99年3月から2001年前半までの石油価格高騰(ミニ石油ショック)は過去2回の石油危機と違って、戦争や革命による供給の混乱なしに起きた。このため、石油価格高騰をもたらすような変化が石油産業に起きたかどうかをめぐって活発な議論が行われている。 D・ヤーギンはOPECの遊休設備が減少し、生産枠遵守が容易になり、ニューOPECが生まれ、高石油価格は今後も維持されると主張する。また、従来OPECの価格管理能力を低く見てきたM・リンチのような研究者も世界の供給能力と需要のギャップが縮小、OPECに価格管理能力が高まったとの見方をするようになっている。少数だが石油価格の高騰を石油埋蔵量の頭打ちと関係付けて論じる学者もいる。 石油の需給ギャップが縮小し、OPECの生産・価格管理が容易になったことはほとんどの論者が認めるが、その原因については資源枯渇諭とアメリカのイラク、リビア、イランに対する制裁による投資不足に見方が分かれている。後者の見解に立てば、アメリカの外交政策の変更によって石油の増産、需給緩和は可能になる。アラブ諸国は前者に近い考えでアメリカのイラク攻撃は石油の強奪、OPECの石油破壊をめざすものと受け取っている。
|