1.実証分析のための計量モデルの開発 1990年代以降のアメリカ経済及び日本経済におけるIT革命による社会経済構造の変化が労働生産性に与える影響を解明するために、労働生産性の成長要因を検討し、各成長要因の寄与率を計算するために必要な計量モデルを開発した。その際、IT革命の影響を総合的に把握するため、資本ストックをコンピュータ関連設備に通信機器等その他の情報関連機器を加えた「IT関連資本ストック」と、その他の「IT以外の資本ストック」とに分けたCobb-Douglas型の生産関数を用いることの有用性を確認した。 2.文献資料の収集 IT革命が労働生産性上昇率に与えている影響を実証的に検討するため、アメリカの商務省や労働省がインターネットなどで公開している93SNAに基づくGDP統計や資本ストック・労働統計に関する最新データだけでなく、アメリカにおけるIT革命の動向や最近のアメリカのニューエコノミー論に関する各種文献や資料を収集した。同様に、日本の内閣府経済社会総合研究所や総務省統計局などの労働生産性に関連した各種統計データを始めとして、IT革命が労働生産性上昇率に与える影響の日米比較を行うための基礎資料の収集に努めた。 3.研究に必要な設備等の購入 実証研究に必要な最新の各種統計データのほとんどが、日米双方においてインターネットによって公開されており、インターネットを利用して直接入手可能であるが、膨大な資料を入手するために高速モデムを内蔵したハードディスクの容量の大きいパソコンを購入するとともに、実証分析に必要なソフトウェアを揃えた。 4.来年度の研究課題 本年度において開発した計量モデルを使用して、目米におけるIT革命の進展がそれぞれの労働生産性上昇率に与えている影響を詳細に分析し、比較検討するとともに、「情報化パラドックス」の有無を検証したい。さらに、ITの普及に伴って必要となる日米の政策課題を明らかにしたい。
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