国際的な二酸化炭素排出の抑制政策では、より普遍的で内発的な技術移転メカニズムに着目する必要がある。国際的な技術移転においては、知識の購入や援助・直接投資の他にも、生産財、中間財、さらに消費財の国際貿易を通じた間接的な流入経路が無視できない。本研究においては、上記の視点から先進国間、および先進国と途上国間の貿易を通じた二酸化炭素排出抑制技術スピルオーバー・メカニズムのモデルを、理論的・実証的に分析し、技術移転効果を計測・検証するとともに、内発的な技術移転政策を検討している。 本年度は、国際的な技術スピルオーバーに関する理論分析を、計量モデルにより実証分析を行った。前年度までに収集されたテストデータにより構築された分析モデルに対し、最新データの追加によって再計測するとともに、モデルのロバスト性を評価した。さらに、これまでサーベイを行った従来の研究と比較検討を行い、援助、直接投資、貿易それぞれの二酸化炭素排出に与える影響、および貿易を通じた途上国への内発的な環境技術移転政策の検討という視点から研究の総括を行った。 これまでの集積データから得られた、食品、素材類、家具・衣類などの、炭素集約度も相対的に低く、また製造に要する技術水準も比較的高くない工業製品群の輸入について、エネルギー消費量においても二酸化炭素排出量においても抑制効果が計測され、特に低所得グループの国家・地域で有意であること、および高所得国家・地域のグループでは、情報通信機器の輸入による抑制効果が計測されたことに対し、最新のデータでも同様の結果が得られた。さらに海外援助および直接投資についてはその効果は限定的であり、R&Dのスピルオーバー効果に関する先行的な研究と同様の結果が得られた。 なお、これらの研究成果は、環境経済・政策学会2003年大会(東京大学(本郷)、2003年9月27日)において報告された。
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