研究課題
基盤研究(C)
西村はイロイロ州一稲作農村において農村調査を行った。初年度は主に貧困層を対象に、次年度は比較的裕福な世帯を対象とした。その結果、農村の成長要因と阻害要因を特定することができた。また、イロイロ市内の統計資料機関で関連資物収集をおこなった。川田はセブにおけるラジオ聴取の様態を調査するとともに、ラジオを含むメディアの規制に関するKBPの制度的側面を検討、考察した。KBPラジオコードは、メディアの社会的責任、放送内容の公平性や倫理性の確保などの側面で、制度的規制が公的性格を帯びる。その一方で「フィリピン文化」の称揚などの文化政策に携わる面では、必ずしも拘束力を発揮せず、リスナーが個人的にメディアと関わる姿が明らかとなった。鈴木はフィリピン大学や国立図書館などで資料収集を行なった。とくに米国による植民地支配開始当初より1930年代までの米国軍政文書、および新聞・雑誌記事などを重点的に当り、その結果、米国植民地統治下におけるミンダナオ島の支配、とりわけ農業コロニーと学校教育制度に関わる1次資料を入手することができ、制度的支配の実態が解明できた。川中は、政治権力を規定する要因として国家資源の配分が重要と考え、特に、財政的な資源の配分を決定する予算過程を事例としで取りあげた。この際、予算過程を規定するものとして、憲法を中心とした法的な制度が果たす役割に着目した。調査としては、主にマニラにおいて予算策定に関わる公文書を収集するとともに、新聞記事を基にしたデータベースづくりを行った。長坂はマニラ市及びラグナ州において、イロコス地方出身者への聞き取り調査を行い、地方出身者の都市における企業活動の実態を把握した。また、東南アジアの都市化に関する諸文献の収集検討を行った。そうした作業を通して、地方出身者を農村と海外に広がるネットワークの中に位置づけた形での都市論の再構築の必要性が明らかとなった。
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