研究概要 |
企業のR&Dと知的財産権について次の3つの研究を行った。 第1は,前年度の研究を受けて,半導体,医薬品,バイオテクノロジーの3領域に限定して,特許紛争と裁判の役割を検討した。知的財産権紛争の司法的解決に際しては,権利を保有している企業が有利であり,企業価直がこの知的財産権価植を反映して,紛争過程に応じて変動することが示された。 第2に,企業の知的財産権の価値と企業価直の関係を分析した。これは医薬品企業をサンプルとして行い,次に世界の代表的企業300社を対象として実施した。知的財産権価殖の決定要因を,技術分野,特許技術の重要性等の技術に付随する特性,次に,企業が特定技術分野へどの程度集中しているか,企業の国籍,企業業績,R&D投資額等の企業特性によってどのように影響されるかを統計的に検討した。さらに上記2種類のサンプルを使用して,R&D投資の決定要因としての企業価値,知的財産権価値の関係を分析した。 第3に,現在,基礎研究拠点として注目されている大学,研究機関のR&Dと知的財産権の分析を行った。これらの基礎研究が,どのように行われ,知的財産権が獲得されているのか,それらはどのように産業に波及しているかを日米の代表的な,大学,研究機関,ベンチャー企業の医薬品特許の事例によって検討した。 この研究によって,企業価値の中核をなす,知的財産権価値の推定方法を提示することが可能になった。また,その決定要因を各要因ごとに評価することが可能になった。また,日本の知的財産権の紛争解決処理制度の問題点として,特許侵害製品の輸入差止等の実効性がない等の問題が明らかになった。さらに基礎研究を担う,大学,研究機関,ベンチャー企業の基礎研究成果が少なく,波及効果が小さいという問題を示した。
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