今年度は、2年間にわたる本研究の初年度に当たるため、当該研究推進に必要な資料収集・整理とその再検討が研究活動の中心であり、その成果は来年度の論文完成の基礎となる研究ノートとして要約された。その概要は、以下の通りである。 従来の伝統的な環境政策に関する研究の多くは、国際的な環境汚染を排出する国際寡占企業を分析対称にするケースでも、ある国の政府が環境規制とか環境税を課しても、国際寡占企業が生産拠点を変更しないという前提で分析がなされていた。しかしながら、現実には、ある国の政府が他の国の政府より高い環境税を課すと、国際寡占企業は、当該国から他国に生産拠点を移すという現象が観察される。勿論、このような国際寡占企業の行動を考慮した研究も2〜3存在するが、そのケースでも生産プラントの規模が一定かつプラント建設は環境汚染を伴わないという前提を採用しており、なお分析としては不十分であった。私の研究ノートは、国際寡占企業が生産拠点のみならず生産プラントの規模も選択出来るケースでは、ある国にとっての最適環境税が正ではなく負(環境補助金)になる可能性を示し、従来の分析結果を大きく修正する成果を提出した。 以上が今年度の主たる研究成果であるが、次年度は、この成果をさらに発展させ、一つの論文として完成させる予定である。
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