本研究は、国際寡占市場における多国籍企業の財生産と環境汚染を考慮した簡単なモデルを構築し、自国政府によって採用される最適環境汚染税を吟味した。主要な分析成果は、以下の様に要約される。 1.外国政府が環境より経済を優先して環境汚染税を課さないケースでも、自国政府は、自己の環境汚染税のみで世界の環境汚染を変化させることが可能である。 2.自国政府が課す最適環境汚染税は、市場の需要関数、企業の費用関数、環境ダメージ関数及びスピルオーバー率等に依存し、必ずしも正ではなく負になる可能性がある。それ故、常に正の環境汚染課税を採用することは、最適資源配分の観点から望ましくない。 3.外国が環境汚染に余りにも寛大なケースでは、自国政府による環境汚染課税の引き上げは、環境汚染の輸出という現象を引き起こすのみならず、世界の環境汚染排出総量を増加させる可能性を持つ。 4.自国政府による環境汚染課税は、外国の経済活動及び経済厚生に大きい効果を与えるのみならず、必ずしも常にプラスの効果を与えるとは限らない。それ故、環境汚染課税を採用するとき、自国政府は、このような効果を念顕に置いて実施すべきであろう。 5.自国政府が、自国と外国の結合経済厚生を最大化する環境汚染課税を採用しても財政的負担の増加は左程大きくないので、その様な環境汚染課税を採用するフィージビリティーは大きい。
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