平成13年度から15年度にかけ3ヵ年計画で進めてきた本研究課題の目的は、近年急速に拡大しつつある東南アジア地域の域外経済交流の実態とその意味を、環インド洋地域経済圏という新たなフレームワークの中で明らかにすることにあった。そこでは特に各国の貿易構造を各種統計データを使って整理検討した上で、環インド洋地域における新たな国際分業の構築とその可能性について考察した。 以下、本年度も含め過去3ヵ年の研究から得られた知見を簡単にまとめるならば以下のようである。 環インド洋地域の経済交流の歴史は古く、かつては東アジア全域をも含む巨大な海洋経済交流ネットワークが構築されていた。その意味では、様々な問題を孕みつつも1997年に成立した「環インド洋地域協力連合」(IOR-ARC)のような新たな地域フレームワのもつ意味は、理念としての南々貿易や協力が歴史的、風土的事実を背景としてより現実の可能性として模索され始めた一つの例示であるといえる。しかしながら、同地域の貿易構造や特化係数等のデータ分析からは、先進地域経済への依存が顕著であり、現時点でのインド洋大での域内経済交流はあくまで萌芽的にしか確認することが出来ないというのが現実である。ただ同地域各国の要素賦存状況を検討するならば、このこと自体が将来に渡る同地域内分業の可能性を否定するものではないこともまた事実である。 萌芽的とはいえ、結論として将来期待されるインド洋地域の分業と東南アジア地域の役割について述べれば以下のようになる。まず人口稠密な東南アジアの経済発展は消費市場としての同地域のプレゼンスを高め、さらに同地域内で生産された消費財が自給自足的に消費されるだけでなく、マレーシアの対南アフリカ投資などにみられるように、域内後発地域への生産移転が、受入国の工業化を促すことが期待される。このことはそれまで一方的に先進地域へと流れていた資源需要の転換を意味し、その意味では南ア、オーストラリア、中東地域の役割も重要である。結論として、インド洋大での雁行型発展がいかに行なわれるかが域内分業体制の確立を円滑にする一つの鍵となるといえる。 長年、中国、東南アジア諸国と分業関係を確立してきた我が国においても、今後出現しうるかもしれないこうした新たな地域経済フレームワークの成否は決して無関係ではないといえる。
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