研究の目的は、着実に推進される電力の自由化が、原子力政策(原子力利用長期計画等)と地球温暖化対策(気候変動枠組み条約等)にいかなる影響を与えるかを、国際比較を通じて、理論的・実証的に研究し、将来のエネルギー政策のあり方を展望することである。 13年度の研究実績は具体的に以下の通りである。 第1に、電力の規制改革と競争政策の現状と動向を、産業組織論の分析方法で、日本と英国について実証分析を行った。主たる内容は、電力自由化の経緯と現状、電力の産業組織と市場成果の計量分析、英国電力政策の動向、新たな電力取引制度(旧および新プール制の比較)の現状と問題点、英国電力小売自由化の現状と推移、電力事業の企業戦略等である。とくに、「電力の産業組織と市場成果」における、電源別電力費用の規定因と規模の経済性の計測、負荷率向上施策の比較計量分析等の内容は、当該分野における新たなファクトファインデング(知見)である。 原子力および地球温暖化政策に対して思考基盤を提供するものである。第2に、日本と英国の国際比較ののち、それらを基に政策提言を行った。政策提言の主たる内容は、段階的自由化の拡大と電力取引市場の創設、創設に当たっての留意事項、送電ネットワークに対する新規参入者の公平なアクセスの実現、連携線の強化と地域間プールの形成、実時間料金制とプライオリティ・サービス等の革新的料金制の導入、原子力政策のあり方、再生可能エネルギーの育成と地球環境政策、さらにエネルギーと公共政策、行政および競争政策当局の役割等である。
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