研究の目的は、着実に推進される電力の自由化が、原子力政策(原子力利用長期計画等)と地球温暖化対策(気候変動枠組み条約等)にいかなる影響を与えるかを、国際比較を通じて、理論的・実証的に研究し、将来のエネルギー政策のあり方を展望することである。 平成14年度の研究実績は具体的に以下の通りである。 平成14年度の研究実績は3つに区分される。第1は、電力の規制改革と競争政策の現状と動向を産業組織論の分析方法で、国際比較するものである。ここでは、日本の総合資源エネルギー調査会の改革案とその法令等を評価し今後の電力自由化の問題点を明らかにした。その際、すでに諸外国で実施されているプール制度、市場取引制度、不公正競争のガイドライン等を検討し、わが国の政策体系のあり方を吟味している。とくに電力の生産、卸段階、供給、小売、流通にみられる競争態様とその市場成果を細かく分析した。これらの側面は、わが国の行政および学術分野では、実証的観点から、十分に研究されていない分野である。 第2は、今回の法改正等の作成にあたっては、取り上げられていない原子力政策に関する施策に関する研究である。エネルギー源として、化石燃料はもとより原子力および自然エネルギーはきわめて重要である。英国のエネルギー政策と原子力の経緯とあり方を通史的に検討することによって電力自由化後の原子力政策(原子力利用長期計画等)が、どのように位置付けられるかを考察した。エネルギーの安定供給と自由化の枠組み、いわゆる原子力のバックエンド分野への公的支援の方法と効果等について、実証的に研究した。この研究は、次年度のエネルギー・セキュリティー政策への糸口を与えるものである。 第3は、気候変動プログラムにおける排出権取引制度の理論的・実証的研究である京都議定書等にみられるように、温室効果ガス削減に向けた取り組みの制度である排出権取引を取り上げ、それに関する政府の役割、制度設計の問題点等を、理論的に分析し、初期割当て制度の有効性を研究した。次年度においては、産業組織と環境政策の視点から、実証的分析を加える予定である。 以上、平成14年度の研究実績においては、電力の自由化が、原子力政策と地球温暖化対策に与える影響を、国際比較に基づき、通史と理論の両面から仔細にわたって分析した。
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