研究の目的は、今後、着実に推進される電力の自由化が、原子力政策(原子力利用長期計画等)と地球温暖化対策(気候変動枠組み条約等)にいかなる影響を与えるかを、国際比較を通じて、理論的・実証的に研究し、将来のエネルギー政策のあり方を展望することである。 平成15年度においては、第1に、わが国の電力の規制改革、競争政策および需要・供給の現状と動向を、実証的産業組織論の分析方法で、解析した。マクロ・ミクロのデータに基づく計量経済とシミュレーション分析が利用された。この研究は、今後の電力・エネルギー自由化と地球環境政策の理論・実証分析にとって貴重な研究になるものと考えられる。とくに1990年代以降に見られる発電部門における規模の不経済性の発生、送電部門における規模の経済性の低下傾向等は、原子力計画の見直しはもとより企業・産業の戦略、加えて経済産業省・環境省等の公共政策そのものの再構築を加速する可能性が高い。 そして、第2に、競争促進の効果が消費者福祉の向上と地球環境の改善に資する制度設計を、国際比較を通じて、前年度に引き続いて、詳細に研究した。第3に、原子力発電に対する安全性と経済性に関する経済成果と経済政策の体系を国際比較することで、各国のエネルギーの経済政策体系と行政措置の巧拙と改革の展望を、研究した。
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