研究概要 |
2年目にあたる本年度は,引き続いての文献収集と,経済団体のデータベース化,同機関誌を中心とした政策論争の整理を中心に研究を進めた。その結果,この時期,隣接諸国や日本にまでも影響を与えていた「革新」概念が,スイスの場合にも中心的政策概念であったことが確認され,またここでも,スイス的特質として,分権的革新理念ともいうべき極めて特異な政策思想体系が提示されていたことが確認された。しかし,この時期のコーポラティズム的編成を明らかにするためには,経済的頂上団体の活動の側からの検討だけでは,十分でないことも次第に明らかとなった。そこで年度後半には,ゲオルク・フィッシャー社,BBC社,スルザー社等のドイツ語圏の諸企業を個別に取り上げ,商業会議所,カントン政府,連邦政府との関係を検討した。その結果,経営史研究からの成果の摂取に成功した。今後は,対象企業数を増やすなどして,経営内史料の収集を中心に分析の精度を上げて行く予定である。 他方,労働組合,手工業者団体については,資料は未だ十分には入手できておらず,チューリヒの二つの地方組織の1920年代から1930年代の活動事例について概略的な情報が得られたのみである。今後とりわけバーゼル,フランス語圏等での資料の探索を強化する必要がある。 全体像を描くのは最終年度の作業となるため,あくまで中間報告的に,研究成果を学会・雑誌論文発表する予定であるが,今のところこれも報告申請と投稿準備の段階である。
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