本年度も都立大学保管の閉鎖機関資料の整理と分析を行った。戦時金融金庫・国民更生金庫はじめ、南洋拓殖、北支那開発など外地の植民地開発・投資機関の内部資料を、デジタル撮影ないしマイクロフィルム撮影を継続し、資料目録をデータ・ベース化した。 これと平行して本格的な研究取りまとめにも着手した。国民更生金庫については、中小企業整備政策の展開に沿って、業種別の企業整備の実施状況、更生金庫による資産買い上げと処分、商工業組合等による転廃業者に対する共助金相当額の融資などを業種別・地域別に分析した。この結果、戦時の大規模な中小企業整備とその資源化が、比較的優遇された店舗・在庫・営業権買い上げによって円滑に進んだことなどが解明された。 また、戦時金融金庫については、500数十件の株式投資案件、600数十件の融資案件について、融資先の事業状況、資金需要の内容、融資先の信用評価を利用して、業種別・規模別等の投融資の実態を分析し、戦時経済総動員体制の一翼を担った機関として、その役割を検討した。特に、占領地域の接収工場の設備補修費、運転資金の融資や、輸送力動員上太平洋戦争期に急速に重要性が増した機帆船海運など比較的小規模な地域輸送機関と小型機帆船建造会社など、従来の研究がほとんどなかった領域を重点的に検討した。さらに民間金融機関ではハイリスクゆえに扱い得ないこれらの融資が、金融市場全体の安定のためにも寄与していたことなども合わせて明らかになった。
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