本年度は、下記の3つのテーマを中心に研究を進め、一定の成果をあげることができた。 第1は、1950年代から70年代における八幡製鉄所の経営労務管理と採用管理の変化に関する研究である。同製鉄所ではこの時期、新規高卒者の定期採用制度が他社に先駆けていち早く導入されるとともに、ライン・スタッフ制度、作業長制度、職務給、新人事制度の確立といった英英労務管理の全面的な革新=「経営近代化」が実施された。本年度は、高卒者の定期採用制度の確立をこうした「経営近代化」プログラムとの関連で分析した英文論文を執筆した。同論文は現在出版準備中である。また、このテーマについては、経営陣の一人として実際に改革に関与した経験を持つ福岡道生氏を中心とする研究会に参加し、活発な発言を行った。同研究会の議事録は本年4月に刊行予定の福岡氏の著書に収録される予定である。 第2は、戦前における学校と企業の実績関係の歴史的生成過程に関する研究である。このテーマについては、鶴岡工業学校の内部資料を用いた実証的な研究を行い、その成果を仲間内の研究会で報告した。現在は、そこで得られたコメントを参考にしてさらに研究を重ね、2002年5月開催予定の社会経済史学会全国大会で報告を行うべく準備中である。 第3は、1950年代に東京大学社会科学研究所が実施した京浜工業地帯従業員調査の再分析である。このテーマについては今年度データベース化を完了し、さまざまな分析やインタビュー調査を実施した。現在は最終報告書を作成中で、近日中に完成の予定である。
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