本年度は、下記の3つのテーマを中心に研究を進め、一定の成果をあげる事ができた。 第1は、戦前における学校と企業の実績関係の歴史的生成過程に関する研究である。このテーマについては、鶴岡工業学校の内部資料や、地方新聞等の1次資料を用いた実証的な分析を行い、その成果を社会経済史学会全国大会で報告した。ところで、この研究の過程で、鶴岡工業学校の重要な実績企業として日立製作所の存在がうかびあがることとなった。本研究者は、幸いにも過去に日立製作所の職員層の雇用管理について大量の資料を収集しており、これを新たな研究の観点から見直すためデータベース化を進めた。現在は、この資料をも利用しながら、最終報告書を作成中である。 第2は、戦後の中学校新規卒業者の就職を、職業安定行政との関連から明らかにする研究である。このテーマについては、本研究者はすでに苅谷剛彦・石田浩両氏との共編著を発表しているが、社会経済史学会の欧文叢書への寄稿をもとめられたのを機会に、これまでの研究成果を新たな観点から再構成して英文論文を執筆した。同論文は近日中にOxford University Pressから刊行される予定である。 第3は、1950年代に東京大学社会科学研究所が実施した京浜工業地帯従業員調査の再分析である。このテーマについては昨年中に最終報告書を作成する予定であったが、その後当初のデータ分析の仕方に若干の無理があったこと、関連調査の所在が明らかになったことが明らかになり、取り纏めが遅れている。しかし、もはや十分に準備もととのったので、近日中に完成の見込である。
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