研究概要 |
本研究の目的は、近世日朝貿易の内容を数量的に、かつまた貿易に従事した人々の動向を微視的に把握することにある。このため日本国内外に散逸した膨大な対馬藩宗家の記録類を調査し、分析することが研究の主眼になる。本年度、実施した史料調査とその概要は以下の通りである。 (1)韓国・国史編纂委員会……9月3日〜7日韓国・京畿道果川市 (2)長崎県立対馬歴史民俗資料館ほか……11月20日〜24日長崎県下県郡厳原町 このうち(1)は、海外共同研究者(鄭成一氏)の交渉により、マイクロ・プリンター使用を許可され、貿易担当官代官の記録や倭館出入り商人の記録、貿易記録など59冊(総計4,706枚)の収集ができた。現在、収集史料は総てファイル製本し、帳簿等の分析作業を行っている。(2)は、朝鮮方や代官方などの日記、帳簿、書状、さらに官営貿易の実態を把握するための参判使記録など、このほか対馬の旧家(橋辺、平山、杉村)や寺院(萬松院、西山寺、醴泉院)に残る史料も調査した。ここの収集史料は、総て35ミリ・マイクロフィルム撮影を行い、32本分(約22,400コマ)を収集、現像後、研究室保有のプリンターによって焼付て、現在ファイル製本、分類・整理作業を行っている。 また10月25日〜28日の期間、海外共同研究者を東京へ招聘し、(3)東京大学史料編纂所(主に江戸藩邸記録)、(4)慶應義塾図書館(主に近世後期の貿易記録)所蔵分の記録類を、筆記およびコピーにより収集し、同時にデータ分析の手法等について研究打ち合わせを行った。現在注目しているのは、官営貿易における朝鮮鷹の輸入関係の記録(輸入業務全体の流れを把握できる)、代官方の現帳簿の分析、数種の私貿易帳簿の分析である。
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