1.本年度の研究計画にしたがって、次のような資料調査・収集を行った。 (1)大阪市場の米穀取引を示す資料として、大阪堂島米穀取引所に関する一次資料(関西大学所蔵「堂島米市場文書」)を調査し、明治末から1920年代にかけての同取引所の施設、商況等について調査・収集した。また、大阪府立中之島図書館等において、大阪・神戸市場に関する調査報告書、統計書等の刊行資料を継続して調査・収集した。(2)東海地方の米穀産地の動向を見るため、岐阜県歴史資料館、津市図書館等において資料を調査・収集した。(3)主要な米穀産地の産米改良への対応、および米穀移出の諸条件等を探るため、山形県庄内地方の酒田に設置された米券倉庫(山居倉庫)について、酒田市立中央図書館および同「光丘文庫」等の所蔵資料を調査・収集した。(4)東京市場や全国的な市場の動向については、東京およびその近郊の図書館・資料館等の所蔵資料を随時調査・収集した。 2.上記の作業から、1910年代〜20年代に本格化する、朝鮮米の国内市場進出による大阪・神戸市場の取引機構の変貌、関西消費市場における国内産米・朝鮮米の競争と産地の再編、その国内市場への影響、大戦期に決定的となる汽船から鉄道への輸送の転換、等の論点を抽出し、国内米穀市場の再編過程を、東アジア市場-国内市場-地域市場(産地)の三視点から検討している。 3.こうした検討に必要な基礎データのうち、上記1(1)で収集した大阪堂島米穀取引所の月次商況調査報告書(関西大学図書館所蔵「堂島米市場文書」、手書きのものが多い)は大阪市場の動向を月ごとに概観するものであるが、それらのうち明治末から1920年代の部分について、利用の便を図り、かつ検索を容易にするため、謝金を使用して入力作業を開始した。
|