研究概要 |
今年度はナチス党の綱領に示された企業統制に関する諸思想・諸構想を中心に検討した。 1.ナチス党綱領において最も重要な位置を占める「公益は私益に優先する」(Gemeinnutz gent vor Eigennutz)の意義とその適用について。 2.「利子隷属制の打破」及び不労所得批判について。 3.経営と労働の重視,株式会社における経営者優位について。 4.私的イニシャチヴ,創意と責任の重視と,公益優先との関連について。 上記1〜4は相互に関連しているが、1と2とは、資本主義経済の営利原則に対する批判とその修正に結びつくものであり、ナチス経済思想のいわゆる反資本主義的な要素をなしている。これに対して、4の私的イニシャチヴの重視、個人の創意尊重の考えは、資本主義的企業の存立を前提として、その発展を構想するものであり、ナチスの企業統制は、この二つの相対する原則の調整として展開されることになる。この問題を同時代の日本の状況と関連づけて検討した成果が下記11の論文である。
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