研究概要 |
昨年度は、ナチス党綱領における企業活動の規制,とくに公益優先原則,利子隷属性の打破及び労働重視などについて検討した。今年度は,ナチスが1933年に政権を掌握した後の経済政策・経済構想に焦点を合わせて、その中で企業統制が如何に実施されたかについて研究を実施した。 (1)経済有機的構成準備法及び強制カルテル法について (2)配当制限について-資本投下法・公債投資法をめぐって- (3)ナチスの株式会社法改正(1937年)における取締役の権限拡大について 上記(1)は、経済の組織化と過当競争の排除・企業活動の合理化が目標とされており、それ自体は企業活動の統制を意味するものではない。しかしこのことによって国家による企業活動の規制の可能性が拡大され、その枠組がつくり出されたことは否定できない。これに対して(2)は、明らかに企業の営利活動の規制につながるもので、利潤統制の一環をなすことになった。しかしそれは株式会社の株主に対する配当の抑制を意味するとしても、利潤一般の規制をめざしたわけではなく、逆に企業による利潤の内部留保の拡大を可能にするものでもあった。(3)は株主総会に対する取締役会の権限を拡大したことにより、株主の地位の相対的低下につながった。
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