研究概要 |
1,実態調査の第一番目として、昨年度は金融機関の生産効率性の地域格差を計測すべく計量モデルを構築したが、それを理論的に改善した。このモデルを使って、金融不況前の1983年度とその後の1999年度を比較して再計算した。不況前には地域格差は見られず、不況後には著しい地域格差が見られる。金融機関の問題が、そのまま、経済発展の地域格差の問題になっているのではないかと推察される。この成果は、学術雑誌に公刊された。また、改善された理論モデルは、これまでの先行研究の未解決部分に光を当てるものであり、現在2編の論文として外国雑誌に投稿中である。 2.実態調査の第二番目として、金融機関の貸出額とGDPのグランジャー因果関係について、1976-1999年までの各地域のパネルデータを用いて計測した。これは昨年度の計量モデルに改善を加えて精緻化したものであり、計測結果に大きな変更はないが、より厳密な結果を得たものである。1990-1999年の金融不況期においては、金融機関の貸出からGDPへの一方向の因果性のみが検出され、金融不況において金融機関の重要性を示唆するものとなった。この成果をWestern Economic Association(2002年7月アメリカのシアトル)で報告した。 3.これらの研究から派生したものとして、不況期および少子高齢化期における日本の年金政策や株式投資について、理論的・実証的研究成果を得た。これらを日本経済学会(小樽2002年6月)やEast Asian Economic Association (Kuala Lumpur, November 2002)で報告した。
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