研究概要 |
付加価値税における電子商取引については,各国がそれぞれ既存の税制によりながら個々ばらばらに課税しているのが現状である。本研究「電子商取引と付加価値税」ではこのような現状に鑑み,今後加速度的に発展していくと予想される電子商取引に対する税制の考察を付加価値税に焦点を絞って行った。 その結果をまとめたのが,玉岡(2001),(2002)である。電子商取引の課税において特に問題になってくると思われるBtoC取引の具体的な課税方法を検討し,各国間で異なる課税方法をとった際に生じる問題点を明らかにした。具体的な課税方法については,OECD報告書が提案した5つの課税方法のうち短期的に採用されようとしているBtoC取引の登録制度やBtoB取引の自己申告・リバースチャージ制度は現時点での技術的な制約もあり止むを得ない面もあるが,制度自体の抱える内在的な問題点から早晩機能しなくなることが明らかであり,技術に基づいた徴税メカニズムを早急に構築する必要があることを示した。また各国間で異なる課税方法をとった際に生じる問題点として,・これまで付加価値税は各国とも仕向地主義で基本的に運用されていたが,電子商取引の核をなすデジタル財の取引については例外的に原産地主義で課税されているので,制度そのものに非対称性が存在すること ・EUが2003年度より電子商取引に対する付加価値課税をすべて仕向地主義に基づく決定をしたことから,デジタル財課税についてEUと非EU諸国の間で原産地主義課税対仕向地主義課税の競合が起こることになる。EUの新制度に合うように各国が電子商取引についてすべて仕向地主義課税を採用したとしても,世界的規模での税収の清算の問題が生じることや,そもそも電子商取引課税の問題の核である取引先相手の確定が仕向地主義課税の導入だけでは解決されないことから新たな混乱が生じること を明らかにした。
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