世代会計は、税金や社会保険料などの政府への負担と年金などの政府からの受益を世代別に生涯にわたって計算するものであり、個人にとっての財政負担の大きさを直接に示す指標を計算できるものである。また、この世代会計を、金融市場や労働市場・財市場を統合して考える必要があるので、ここでは応用一般均衡モデル分析(一般にAGEモデル分析とよばれる)を用いることとした。平成13年度に、AGEモデルの構築に取り組んだ。平成14年度は、そのAGEモデルの精緻化に努めた。現時点のモデル分析による成果は、均衡解の特質の分析に表れている。モデルの改良とともに進行中である現時点までの主要な発見として、少子・高齢化の進行によるサービス産業の拡大は、労働生産性が相対的に高い製造業部門の縮小を伴うために、全体としてのマクロ的パフォーマンスの低下を引き起こす一方、資本・労働比率の上昇によって、一人当りの厚生水準が悪化するわけではないことが示されている。経済政策的には、医療・年金という社会保障制度は「公的に供給される私的財」の性質を持つことから、少子・高齢化の進行下での社会保障制度改革は、資源配分の「効率性」よりは、「所得再配分」により深く関わる問題であることから、この研究から導かれる2つめのメッセージは、人口が縮小しても一定の総支出額を維持しなければならないような公共支出の方が、少子・高齢化の進行する下では深刻な問題となる可能性があることである。
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