研究概要 |
本研究の目的は,非上場企業のメインバンク・システムを解明し,地域の金融構造を明らかにすることにある。1980-1990年をH期とし,1990-2000年をL期として,期別,金融機関の業態別,47都道府県別にメインバンクに関する実証分析を行う。 記述的な分析においては,ほぼどの県も85%前後のメインバンクの固定率を示している。業態別には,地銀の固定率が最も高い。これは全国的に非上場企業のメインバンクは地銀がもっとも安定的であることになる。 貸出金利の高低に着目し,高金利県のサンプルとして宮崎・高知・青森を,低金利県として愛知・京都・岐阜を選んだ分析において,メインバンク固定率は高金利県の方が高い。これはメインバンク集中度が高い地域は貸出の市場集中度も高く,メインバンクの変更が行われにくく,貸出金利も高いと考えられる。 二項ロジット分析においては,H期では資本金の伸びがメインバンク変更に有意であり,操業年数はH期,L期ともに負で有意であった。つまり,業歴の短い企業ほどメインバンク変更の傾向があることになる。しかも,この傾向は上位の業態へ変更する際に顕著であり,成長性のある若い企業が資金調達先の選定を模索している姿が浮かびあがってくる。 地域経済の発展のために,若い成長性のある非上場企業の資金調達の場を創設していく必要性が示唆される。
|