研究概要 |
本研究は1980年、1990年、2000年の全国47都道府県の中小企業データをもとに、期間別、都道府県別、業態別にメインバンクを変更しなかった割合(固定率)を求め、地域金融におけるメインバンク・システムについて実証的に分析するものである。1980-1990年の10年間をH期とし、1990-2000年の期間をL期とする。 メインバンク固定率は金融機関の業態、地域、時期によって異なる。全国平均でH期は85,5%、L期は84.5%であるが、業態別には地銀がもっとも高い。1980-2000年までの20年間のメインバンク固定率は、全国平均で74.6%である。またH期にメインバンクを変更して、さらにL期にもメインバンクを変更する企業の割合は全国平均で、29.9%である。市場構造が異なる地域のリレーションシップバンキングを比較分析するために、貸出金利の高低に着目し、低金利県として愛知・京都・岐阜の3県を、高金利県として、宮崎・高知・青森の3県をサンプルとして選ぶと、高金利県は低金利県に比して、メインバンク固定率は高く、リレーションの数、すなわち取引銀行の数は少なく、メインバンク集中度は高く、貸出残高をもとにしたハーフィンダール指数は高いという傾向がある。このことは、リレーションシップが継続的な地域では、貸出金利が高い地域を形成し、ホールドアップ問題を発生させている可能性があることを示唆している。 メインバンク変更の要因について、中小企業の財務データについて二項ロジット分析を行うと、資本金の伸びが有意で符号は正である。また業歴の短い企業ほどメインバンクを変更する傾向が見受けられる。業態間のメインバンク変更を変項ロジット分析を行うと成長性の高い中小企業が、より上位の業態へメインバンクを変更するというわけではなく、むしろ同位業態の中でメインバンクを変更している傾向があることがわかった。(了)
|