本年度は、本研究の初年度であり、研究の出発点として、2001年7月、英国カーディフ大学で開催された「英国マーケティング・アカデミー」の2001年大会において、「日本のマーケティングの優位性と弱点(Advantages and Disadvantages of Japanese Marketing)」と題した報告を行ない、わが国製造業マーケティングの優位性を構成した諸要素が、環境の変化によって弱点へと転化しつつあることを論じ、こうした点について英国やアジア各国からの参加者らと討論を行なった。 これとあわせて、今年度は、研究計画書に示した通り、英国の競争委員会の各種報告書について網羅的な調査を行なった。そのなかで、重要な報告書についてはその収集を行ない、この活動は現在も継続している。英国競争委員会報告書(1冊が700ページにも及ぶ大部のものも少なくない)は、1973年公正取引法、1980年/1998年競争法に基づき、製造企業マーケティングの実態を詳細に調査しており、これまであまり知られてこなかった英国における製造企業マーケティングの実態を解明するための好的の素材である。本年度は法律の専門家に1998年競争法の条文の正確な翻訳を依頼する一方で、自動車(新車)、家電、ビール、アイスクリーム(非貯蔵用)について、EC競争法との関連をも含めて集中的に検討を行ない、とりわけ自動車(新車)とアイスクリーム(非貯蔵用)については、2002年2月、「イギリス流通研究会」において概要を報告する機会を得た。自動車マーケティングは、EC競争法の「一括適用除外」規定が本年9月に期限切れになることから、現在、改定案のプレス発表が行なわれているところであり、これによる英国マーケティングへの影響も避けることができない。引き続き検討を続ける予定である。また、アイスクリーム(非貯蔵用)のマーケティングは、卸・小売段階双方で専売店化の戦略があり、これは、わが国のいわゆる「系列化」と類似のものであるが、わが国とは異なり、英国競争委員会の強い姿勢によって、こうした戦略に制限が加えられている。これらの内容については、2年度目に邦文論文としてまとめられ、公表される予定である。 なお、海外研究協力者である英国エディバラ大学のジョン・ドーソン教授との打ち合わせを適宜行なっている。
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