これまでの、消費者の多段階意志決定プロセスについての独立した研究、売り手側からの説得過程・手段に関する研究、あるいはオンライン・ショッピング・サイトの設計についてのさまざまな議論、本研究はこれらの諸研究を消費者の多段階意思決定プロセスとして捉え、統一的な議論ができるような理論的枠組みを提供しようとするものである。そこで、まず効用理論をべースとした多段階意志決定プロセスの理論モデルを構築し、そのモデルに基づいて説得プロセスのデザインをするというアプローチをとった。そして、消費者選好の異質性や製品空間における競合製品の分布について議論し、その分布の分散の大きさと前倒しで提示すべき情報量との関係を明らかにした。 一方、効用理論からは説明が難しいが重要な消費者行動として「意思決定のフレーミング」の問題を取り上げ、擬似的なオンライン・ショッピング環境のもとで予備的な実験をいくつか行った。極端の回避や対比効果などに加え、参照点の形成とその移動について実験し、オンライン・ショッピング環境のデザインに役立てようというものである。実験は今後も継続して実施する計画であるが、これまでのところでは、ショッピング環境の設計により消費者の参照点を上方に移動し、売り手の収益向上に貢献できることが確認された。そして、これらの結果を説明するモデルを構築し、6月のMarketing Science Conferenceで報告する予定である。
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