日本の消費者が、(1)限定好き、(2)新しもの好き、(3)ブーム・流行性好きなどの特質を有している可能性が充分に裏付けられた。このことは、フランスの消費者との違いという点でも明らかとなった。日本の消費者のこれら3つの特質は、集団主義的な傾向、他者からの影響力を強く受ける傾向にあるなどの文化的な要因に基礎を置くものとも考えられるが、日本の社会が「理想とする社会」「明確な目標のある消費生活」など広く共有された社会像を持たないことも大きな原因と思われる。フランス社会においては、これらが明確であり、人びとの理想的な社会像は「家族や親しい知人と食事をしたり休暇を過ごしたりできる社会」につきるといっても過言ではない。フランスの消費者の消費生活の本質はこれらの追求にあるといえる。日本の消費者は、自分たちの消費生活の目標や理想像などが人それぞれであり、共有された理想像というものを見出すことが難しい。他者や社会からの影響を絶えず受け、限定されたものを求め、新しいものを追求し、そしてブーム・流行にのる、これらのこと自体が目的であり理想の消費のありようといえる。日本市場でのマーケティング・サクセスの実現のためには、これらの日本の消費者の特質に対応させることが重要である。トヨタ自動車や本田技研工業といった日本の企業の売上高やルイ・ヴィトンやエルメスなどのフランスの有名ブランド・メーカーの日本での売上高は過去最高に達している。こうした企業が厳しい経済情勢のなか何故好調なのか、ブランド戦略だけがその成功の理由ということではないだろう。日本の消費者の特質を十二分に認識し、それらに対応させた戦略を展開し、商品・サービスに絶えず「限定性」を付加、そして新しさの追求、ブーム・流行をつくりそしてそれらに追随するといったことをマーケティング活動の基本においているからといえるだろう。
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