近年のわが国では、長引く不況と金融の自由化の一環としての保険制度の規制緩和、そして超低金利の、進展により、株式の含み損と逆ざや問題、および競争激化による業績の低迷など、保険企業はこれまでにない厳しい状態に直面している。その結果、保険企業の多くは深刻な経営問題を抱えており、1990年代後半以降生命保険7社と損害保険2社が経営破綻した。 保険企業の経営不振や経営破綻は、多くの場合、資産運用の失敗によることが多いといわれてきた。諸外国でもこのことは妥当する。すなわち、本業である保険業務での失敗によるよりも金融業務でのそれによることは案外知られていない。 本研究では、保険企業、とりわけ米国や英国の生命保険企業の資産運用行動を詳細に検討することによって、経営不振や経営破綻の実態を析出しようとする。より具体的には、90年代以降欧米先進国に共通する人口の高齢化や経済不況、あるいは保険需要の成熟化といった生保企業を取り巻く環境変化と生保企業の環境適応行動との因果関係を考量することにより、保険企業の経営破綻の実像を浮き彫りにしようとする。そしてこの経営破綻を招く要因が多くは、資産の運用環境の変化とそれへの不適正な適応行動にあることを析出する。こうした分析はひいては、金融の自由化の遅れたわが国の保険企業の今後の経営革新行動、とりわけ商品開発活動や資産運用行動の革新に大いに役立っことと確信する。
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