今年度は既存研究レビューからの仮説導出、そしてヒアリング調査、アンケート調査に基づく実証分析を中心に行った。現在の取引の連動性概念には、まだまだ多くの問題点がある。モデルとして構築するには、多くの業種・業界での特異性、差異性を包括したものであることが求められる。ケース研究によるヒアリングも、複数業種・業界に対して行われるべきである。しかしながら、今年度の研究では、時間制約もあり代表的な企業2社へのヒアリング調査に留まっている。アンケート調査及びヒアリング調査によって、取引連動性の何らかの関係の存在は、確認できた。また、卸売業者の規模によって、その連動の内容は異なるものであった。さらには、取引相手(製造業者と小売業者)の業態・タイプによって、連動する関係に違いがあるこことも確認された。すなわち、大規模製造業者と一般小売店をつなぐ消費財卸売業者の取引関係はプラス関係を有し、大規模製造業者と百貨店をつなぐ卸売業者の取引関係はマイナス関係を示す。また、中小規模製造業者と百貨店、量販店・ディスカウントストア、専門店チェーンとをつなぐ卸売業者の取引関係はいずれもプラス関係を示すことが確認されている。 今後は、ヒアリング調査をさらに複数の多様な業種にわたる卸売業者に対して行ない、業種間の特異な制度的条件を識別し、歴史制度分析の手法を使い、モデルの精緻化を行っていくことが課題として残されていると言えるだろう。
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