本研究は、卸売流通における仕入れ取引と販売取引の連動関係に着目し、その連動関係の意味、連動関係が生じてくるメカニズム、連動関係が変化する要因分析を考察し、それらを通してさらには流通チャネル構造の変化のダイナミズムを考察することを目的としたものである。先ず、既存研究のレビューにより、仕入れ取引と販売取引の連動関係の存在そしてそのメカニズムについて説明が試みられた。そこでは取引関係連動の低いレベルから高いレベルへ向かう展開経路が想定できる。この経路は、取引関係を結んだ初期段階においては費用節約的に仕入れ取引と販売取引を結び付けてゆく場合と、取引関係が進行してゆく後に費用節約的に仕入れ取引と販売取引を結び付けてゆく場合の二つの経路が想定される。さらに、卸売流通機に関するマクロデータに基づき、仕入れ取引と販売取引の連動関係の抽出が行われた。そこでは仕入れ取引誘導型の関係の存在が確認されている。製造業段階の製品取り扱い技術への適応から、仕入れ先行的な取引関係の展開が確認されている。また、卸売業者を対象としたアンケート調査に基づき、近年百貨店や大規模小売業者に対する販売取引は縮小傾向にあり、専門量販店や専門店への販売と中小製造業者との仕入れ取引関係が連動関係を持つようになってきたことも、確認されている。なお、取引関係の連動性からチャネル構造の変化を考察する際に、業態変化の検討が有効である点から、卸売業態の分析も行われた。卸売業態の変化は、特定の小売業態との取引関係及び製造業者との取引関係により規定されることが検討され、本研究の成果がまとめられた。
|