経済グローバル化の進展などを背景に、わが国企業の海外事業活動は今後も一層の積極的展開が予想される。他方、アジア・ロシア・中南米の通貨危機、またインドネシア・ユーゴを始めとした世界各地域での社会・政治的状況の混迷など、国際経営を取り巻く環境は近年極めて不安定化しているのも事実である。 本研究では、わが国企業が対外直接投資の形で海外進出する際に、投資相手国の如何なる要因を重要視していたかを、種々の統計資料の解析を基本に解明しようとするものである。とりわけ、経済面での脆弱性、社会面での不安定性、政治面での不確実性などといった所謂カントリーリスク要因を、企業が投資先国の選定に際して充分に比較検討していたかを解明する。 分析の手順として、(1)日本企業による海外直接投資のマクロ経済的要因、(2)日本企業による海外直接投資の企業内(財務)要因、(3)日本企業による海外直接投資と国際貿易、(4)国際資本移動(形態別)におけるカントリーリスクの反映度合、(5)業態別海外直接投資にみるカントリーリスクの影響度:JBRI.格付分析、(6)業態別海外直接投資にみるカントリーリスクの影響度:各国別分析などをテーマに、約30の開発途上国及び1990年前後を対象に、多重回帰、主成分分析などの多変量解析手法を用いて分析。 わが国企業による海外直接投資にあっては、カントリーリスクに対する配慮が余りなされていないこと、とりわけ政治リスクに対しては殆ど考慮されていないこと、また投資規定要因について業種別に大きなバラツキが見られることなどが知られた。
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