初年度にあたる今年度は、中小企業の戦略的連携に関する文献調査と統計分析、及び中小企業の組合等に対する聞き取り調査を主に行った。それらの結果に基づいて、来年度に予定されている大規模なアンケート調査のための予備調査を準備中である。本調査を実施していない段階であるので、発表された研究成果はまだない。 統計分析については、これまでの分析に加えて対象規模を拡大し、モデルを修正して再検討を行った結果、企業間の共同研究開発の効果は企業規模によって異なり、中小企業では利益率に対して正の効果があるが、大規模企業については負の効果がみられた。大企業に関する結果はアメリカの先行研究と一致するものである。このことから、中小企業における共同研究開発は大企業とは異なる特徴を持つことが推定される。なお、この度の統計分析で用いた統計調査の個票データを入手すべく、現在関係官庁に対して利用申請を行っている。 全国中小企業団体中央会調査部と、研究開発を目的とする中小企業の協同組合3カ所(千葉県・静岡県・愛知県)における聞き取り調査を通じて、協同組合方式による中小企業間の研究開発の特徴と課題が具体的に明らかになり、アンケート調査の設計に向けての有用な示唆を得ることができた。とりわけ、中小企業における研究開発の特徴が共同研究の組織的特徴を規定すること、また中小企業間の共同研究開発では大企業に比べて組織上の問題が緩和されやすいこと、しかし他方で利益や売り上げに対する直接的な効果が現れにくいことが明らかにされた。
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