研究概要 |
本年度においては,第一に,起業者のビジネスモデルを議論する前段階として,ビジネスモデル一般に関する定義を概観した.その中でもっとも優れているHamel(2000)の議論を詳細に検討した.第二に,起業者活動が伴う不確実性および多義性について論述し,特に多義的な状況では,起業者活動は認知活動となることを指摘した.第三に,認知活動の基盤となる認知地図の定義および構成要素と地図の性質を議論した後,認知地図の変革方法として,以下の二つのアプローチを検討した.一つ目が,よく理解され慣れ親しんだビジネスモデルをベースにして,それを比較的不慣れな状況や領域(ターゲット)に転移して適合するモデルを創造する方法(ベース・ターゲットアプローチ)である.明確な基礎理論がない要素連結アプローチとは異なり,本アプローチには,アナロジー理論という基盤理論(Holyoak and Thagard,1995)がある.まず,アナロジーおよびその理論の検討,ついでそれを基にしての事例の分析を行った.最後に,この分析を踏まえ,ビジネスモデル策定のための基礎理論となるために,ホリオーク/サガートのアナロジー理論にどのような変更を加えるべきかを論じた.二つ目のアプローチは,ベースとなるビジネスモデル内にある要素の間の関係をあえて変更してターゲットを組み立てようとするものである.これは,Davis(1971)の議論に依拠しながら考察を行った.第四に,来年度以降の実証的な研究につなぐために,国内外のベンチャービジネス関連施設の訪問を行った. Davis, M. S., 1971, "That's interesting : Towards a phenomenology of sociology and a sociology of phenomenology.", Philosophy of the Social Sciences, 1 : pp.309-344 Holyoak, K. J., and P. Thagard, "Mental Leaps : Analogy in Creative Thought, MIT Press, 1995 Hamel. G., 2000, Leading the Revolution, Harvard Business School Press
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