研究概要 |
本研究は,組織学習理論および組織認知論を基礎にして,起業者が設定するビジネスモデルを起業者自らの将来のビジネスのあり方やその後の展開の要諦として捉え,それがどのようにして創造されるのか,およびそのプロセスを主として理論的に解明することを目的とした。 これまでの起業者論では,起業アイデアの源になると考えられている種々の要素を列挙することや,生み出されたアイデアの評価ということには言及するが,アイデアがどのように生み出されるのか,あるいはアイデアがどのようなもので構成されるかということを詳細には論じてこなかった。そこで,本研究は,あまり研究されてこなかった起業アイデアの創造と形成に的を絞り理論的な分析および事例分析を行った。 その結果,アナロジーおよび認知地図(cognitive map)という概念,および組織学習理論を基にして,起業のアイデアの創造・構築プロセスを理論的に解き明かし,さらにそのプロセスがどのように進展していくのかを明らかにした。この研究を通じてのアイデア創出の理論化によって,起業者活動において最も重要であるが理論的な根拠が希薄であった部分を埋めることができたと考えられる。ついで,この研究は,理論の創造だけではなく,実務界では頻繁に使用されるにも関わらず定義が曖昧であったビジネスモデルという概念を明確化にし,その結果,ビジネスモデルの構築が,創業において非常に重要な活動であるということを指摘できたと考えている。 さらに,ビジネスモデル創出だけではなく,それが社会的に普及するプロセスを,起業者と起業関係者との間での物語り(story telling)として見ることにより,その普及をより現実に即して捉えられることを指摘した。
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