日本型国際経営とは、日本人が日本語を使って、グローバル・オペレーションを展開することである。従来の日本企業の多国籍化に関する先行研究の多くは、繊維、自動車、家電などの製造企業を主たる対象としており、非製造企業の分析は限られていた。 今回の共同研究で取り上げた総合商社と海運企業は、共に戦前からの海外展開の歴史と海外ネットワークを持ち、日本企業の国際経営の先駆的な役割を担ってきた。これらの非製造企業には、日本型国際経営の特徴が顕著に見られることから、この理由を解明することが、本研究の目的であった。 総合商社と海運業の大手企業について、それぞれの本社を中心に、欧州とアジアの地域拠点などに在籍する社員と退職者など約70人へのインタビュー調査によって、下記の発見事実が得られた。 顧客適合:取引相手のほとんどが日本企業であり、顧客の求めるサービスを提供するためには、日本人主体の組織と日本語のコミュニケーションに合理性がある。 本社適合:広く海外に展開する拠点とスタッフをサポートする機能と意思決定の権限の多くは本社に集中しており、日本語と日本人社員間の人的ネットワークが不可欠となっている。 その結果、グローバル・オペレーションを展開する日本企業のマネジメントは、日本人と本社を中心に日本語で行われ、業務との適合性が指摘できる。現地化が先行する企業であっても、非日本人の登用や英語の利用は、現地のオペレーションにほぼ限定されている。 顧客適合と本社適合は、顧客に追随して海外展開するサービス企業に共通してみられる特徴である。従来は、顧客とする日本企業との相互依存の関係を重視して、日本型国際経営の形態を維持することで、顧客の発展と共に成長が見られた。しかし日本企業の成長性が鈍化すると共に外国企業の成長が著しい中で、日本企業を対象として形成された体制には、環境変化への対応力の限界が見られる。今後これらの発見事実の理論化を進める。
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