三次元CADの採用と使用状況に関する質問票調査を実施・分析した。その結果、日本製造業における三次元CADの普及速度は決して早くないことがわかった。98年に普及率が60%を越えたが、その後は普及が遅いために、現在まだ70%である。しかも、その中で、メインツールとして使用しているのは半分以下である。その理由は、三次元CADの導入を効率向上に結び付けることができていないからである。導入している企業の中には、効率が悪化している場合も見られる。悪化の要因として、第一に、設計工数が必用以上に増加していることである。これは、設計ツールとしての三次元モデリングに不慣れなために余分な工数がかかっているからである。加えて、設計者自身が解析作業を実施する割合が増加する一方で、設計者は必ずしもCAEの知識が十分でないため、解析の専門家に比べて工数が多くかかっている。しかも設計の工数負荷の増大にともなった人材需要に組織が迅速に対応できていない。その結果、スキルの低い人材にも過剰な業務が与えられることになり、開発効率が悪化している。 第二に、設計工数を増やして三次元データを作っても、それが後行程で充分にいかされていない。組織の慣性によって、後工程業務のやり方が変更されていない。それゆえ、必要とされる業務は減少したとしても、実際の工数が大幅に削減されることはない。例えば、前工程の設計者が解析作業まで取り込んだとしても、既にルーチン化されている実物を使用した実験・試験を極端に減らすことは難しい。また、プロセス改革の過渡期では、リスク回避のために、新しい解析と従来の実験とを重複させて実施することが必要だという論理もある。 これらからわかったことは、商品開発ネットワークを情報技術で構築するためには、組織とスキルの適応が必須だということである。
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