本年は3つのファインディングスがあった。第一に、三次元CADを有効に利用するためには、それを導入するだけではだめであるが、特に重要なのが、フロントローディング実施能力だということがわかった。三次元CADを活用して、プロジェクトの早い段階において衆知を結集した問題解決を実施するための組織とプロセスが必要なのである。しかし、既存の組織ルーチンを迅速に変革することは難しく、三次元CADによって可能になるはずのフロントローディングが、効果的に実施できていない企業が多く、それらの企業では、製品開発プロセスの効率化が見られなかった。 第二に、商品開発ネットワークにおいては、ネットワーク全体にわたる信頼(ネットワーク信頼とよぶ)が重要な役割を果たしていることがわかった。ネットワーク全体における組織間学習の活性化によって、メンバー企業全体のケーパビリティが底上げされるのである。ネットワーク信頼を構築するためには、ネットワーク内のメンバー間でのアイデンティティ確立、関係的信頼の構築、および知識や価値観の共有が鍵となることがわかった。 第三に、ITや電子機器産業のように、市場環境の不確実性が高い場合に、企業の戦略的意思決定能力が業績に影響を持ち、不確実性が低ければ、オペレーション能力が鍵になることがわかった。つまり、情報技術をうまく活用すれば、それが業績に直接的に影響をもたらすのは、単純なアーキテクチャをもちながら、製品形状が複雑で、競争環境の不確実性があまり高くない場合である。
|