日本においては、適切なリスク管理プログラムと内部管理態勢を確立すべきであるとの意識が広く芽生えてきているものの、科学的なリスク管理アプローチが行なわれている企業は少ない。また、リスク要因を経営要素にそって総合的かつ組織的に分析・対応している企業が少ない点が特徴であるように思われる。企業トラブルが表面化した企業においては、一時的かつ形式的なリスク対策(マニュアルの整備や研修など)が講じられているものの、継続的且つ抜本的な態勢構築がなされていないケースが多い。 米国を中心としたグローバル企業では、Performance(業績管理)とConformance(リスク・倫理管理)のバランスが重要な経営課題となっているため、対象となるリスク要因の範囲も広範であり、純粋リスクから経営者の倫理観にまで及んでいる企業も多い。それでも、問題が発生する要因としては、個人又は特定部署のプロフェッショナルなどによる個人的インセンティブの成就のため、というケースが多く見られた。 一方、日米欧の諸国で共通する点として注目すべきは、多くの企業トラブルのケースにおいて、必ずしもリスク要因そのものが払拭されていないにも拘わらず、業績が上向くにつれて社会的な批判や社内的対応も勢いを無くしている点が見られることである。企業内のリスク管理態勢を適正に維持するために、社外重役やInternal Auditorsなどによる牽制とチェックに常時注力している企業も存在するが、これらの企業に共通することは、トラブルが起きたことが態勢整備のきっかけではなく、企業のミッション・ポリシーなどに由来する例が多く見られることである。
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