日本企業を倫理荒廃させる組織の潜在的なメカニズムを探求し、理論化することを目的とした。日本のメディアでは、倫理荒廃させるメカニズムを「体質」という言う言葉で表現するに留まっていた。さらに日本の経営学・組職研究学界では、実務家主体の企業倫理と企業統治論で議論することが精一杯であり、バブル崩壊時から、継続的に起こる非倫理的行為に対しては、「組織の暗黙の圧力」という言葉で片付ける水準に留まっていた。しかし、今回の研究では、経営学のみならず、広領域の社会科学・哲学での位置づけを踏まえながら、言語化・概念化で抽象度を高め、一般理論を構築した。 この研究の思想的、理論的背景には、現象学、Habermasのdiscourse ethics理論ポストモダニズム(特にフーコー)があり、これらのパラダイム組織研究で用いることで、従来の組織研究では扱えない側面にライトを当てることが可能となった。ドイツ語圏とフランス語圏で生まれたパラダイムであるため、アメリカ・日本の経営学・組織研究学会では、使いこなせる研究者は稀であるが、この研究では、通文化的一般理論の構築までに至った。具体的には、「組織の暗黙の圧力」が、「なぜ」、「どのように」起こるかを体系的に説明できるレヴェルにまで完成させた。理論の現実性を出すために、一般理論を構成する抽象概念が現場でどのように具現化するかも検討した。方法として、現実に不祥事を起した企業の当事者の発言が含まれているメディア記事を丹念に収集し、整哩し、抽象概念との整合性を検討した。特にケースとして、1997・1998年に日本中を震憾させた第一勧業銀行度事件を取り上げた。研究成果は、Journal of Management Studiesの2002年5月号に掲載されることが決定した。
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