日本企業を倫理荒廃させる組織の潜在的なメカニズムを探求し、理論化し、実証研究することを目的とした。この研究の思想的・理論的背景には、現象学・Habermasのdiscourse ethics理論・ポストモダニズム(特にフーコー)があり、これらのパラダイムを組織研究で用いることで、従来の組織研究では扱えない側面にライトを当てることが可能となった。ドイツ語圏とフランス語圏で生まれたパラダイムであるため、アメリカ・日本の経営学界では、使いこなせる研究者は稀であるが、この研究では、通文化的一般理論の構築までに至った。理論の現実性を出すために、一般理論を構成する抽象概念が現場でどのように具現化するかも検討した。成果として、2003年8月にアメリカのシアトルで開催されたAcademy of Management学会で発表すべく論文にまとめ投稿した。フルペーパーのレフェリー制審査を通過し、発表した。その後、国際レフェリー・ジャーナルに投稿すべく、修正の後、投稿し、現在、審査中である。 次に、不祥事の潜在性を分解させる経営変革の方法論の導入し、倫理を組織文化に根付かせる可能性について検討した。理論的枠組みとしては、ドイツ語圏・フランス語圏社会理論で議論されてきたreflexivity(内省性)を発生させつつ、倫理観を組織文化に注入する試みについても考察した。成果として、Asia and Europe in New Global Systemという図書に一章として論文を掲載した。さらに、こうした一連の研究の総括として、2003年10月に開催された2004年度組織学会年次大会統一論題「組織倫理の時代で、論文を発表し、報告要旨集に掲載した。その後、この論文が、学術雑誌の「組織科学」への掲載が決定したという旨の通知を、編集委員会より受けた。
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