本年度は、海外展開のパターンの異なる日本のグローバル・ハイテクベンチャー二社の戦略特性を中心に分析を行った。また、この二社のハイテクベンチャー「アライドテレシス(以下アライド)、ナナオ」の戦略が、アメリカのハイテクベンチャーのそれとどのような違いがあるのかも明らかにした。 ベンチャーの基本原則は、いかに大企業と棲み分けを行うかである。経営資源が豊富な大企業とはできる限り戦わないということが戦略の要諦と言われてきたからである。しかし、アライドは、アメリカのハイテクベンチャーのように競争を回避するような戦略はとっていない。アライドは、競争相手が出てきても、その市場から回避することなく、大企業と徹底的にコスト競争をすることで、競争優位性を構築してきている。 アライドはスピンアウト型の経営者であり、社長の人的ネットワークなどによって、事業を最初からグローバルに展開できるだけの資源を持っていたため、大企業とのコスト競争にも対応することが可能であったとも言える。つまり、競争に対応できる裏打ちされた資源があったから、ボーン・グローバル企業としての戦略を展開できたのであろう。 しかし、ナナオは、アライドのようなボーン・グローバル・カンパニーの戦略をとっていない。ナナオは、日本市場では日本電気というガリバーがいたため、海外市場に出向くことで競争を回避している。その意味でアメリカのハイテクベンチャーと同じ戦略である。 このような競争回避と受容の違いがでてくるのは、ナナオは創業型経営者が立ち上げた会社であり、段階的に海外進出するという伝統的進出パターンをとっている企業であるため、設立当初からグローバル市場で戦えるだけの資源ネットワークを持っていなかったからであろう。
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