我々は知識ネットワークをマネジメントする上での3つの組織能力が必要なことを見いだした。第一の能力は、関係焦点化能力である。多様なネットワークを張り巡らしても、それが本当に自社の強みとどう連動しているかということを常に考えなくてはならない。つまり、多様な関係が構築されてくると、どの関係がもっとも自社の強みにシナジー効果をもたらしているのか。また、どの関係が、強みの変革のトリガーになる可能性を持っているのかということを見きわめる、関係の焦点化能力が要求されてくるであろう。 ネットワーク関係は、決して固定化するものではなく、いままでは自社の強みを強化する関係であったものが、周辺的関係になることもありうる。どの関係が本当に自社の強みを強化する関係なのかを、定期的にモニタリングすることで関係を柔軟に変えていくという、関係性組み替え能力が要求されるのである。これが、要求される第二の能力である。 要求される第三の能力は、互恵性構築能力である。関係を柔軟に組み替えるためには、パートナー間に敵対的な関係を持ってはならない。そのため、例えば、ネットワーク関係を通じて一方の企業が競争優位性を強化し、他方の企業が競争優位を減じるという非対称的関係を構築しては、関係の組み替えは困難になる。また実際に、パートナーの間に互恵関係を構築し、信頼関係を創り出さなければ、新しい知識を創造するうえでの密度の高い情報のインタラクションは不可能である。 今日のように競争、市場環境がダイナミックに変化する環境では、単一企業の持つ経営資源で環境適応することがきわめて困難な時代になってきている。そのため、他の企業との関係をマネジメントする組織能力の育成は、重要な競争優位性の源泉になってきているのである。
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