これまで社会的資源の配分あるいは社会的事業の決定や実施は、基本的に市場(企業セクター)と政府(政府セクター)のどちらかが担うという考えが中心であった。しかし近年の第三のセクター(サードセクター)の台頭と3つのセクター間の融合や協働の増加に伴い、営利法人としての企業や非営利法人のNPOにもこれまでとは異なった展開が見られる。たとえば、制度的に営利法人でありながら社会貢献を重視し社会的役割を果たすような社会貢献型企業や社会志向型企業が現れはじめている。逆にNPOも、効率的組織運営や戦略的マネジメントを重視し経済主体としての事業体を追求しようとしている。さらには企業、NPO、さらには政府という三つのセクターが自らのアイデンティティを守りながら相互に補完しあい相互に調整しあうようなシステムが求められるようになってきている。 研究代表者は、研究課題である「環境主義企業の競争的環境戦略」を具体的に分析するために、(1)新しい企業モデルとして注目されはじめている環境主義企業の特徴と戦略的意義、(2)環境主義企業とNPOとのグリーン・アライアンスに関する欧米のケースの調査、(3)環境主義企業とNPOとのコラボレーションの実態に関する日本のケースの調査、の3つについて理論的研究と実証的研究を行った。(1)ではボディ・ショップ、ベン&ジェリーなどケースをもとに環境主義企業の特徴と社会戦略的意義について論じた。(2)では、フォロン社とグリーンピース、マクドナルドと環境防衛基金、CERESの3つのケースから異なる組織とのパートナーシップあるいはコラボレーションの過程とのグリーン・アライアンスの発展過程を論じた。(3)ではNPO組織「人道目的の地雷除去支援の会(JAHDS)」による社会的事業創造のケースとして地雷探知装置マインアイの共同開発を中心に、異なる組織とのコラボレーションの過程について論じた。
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