研究概要 |
現代の生産は,単に一国における一企業の,しかも一工場に限られない。国内生産はもとより,海外に生産拠点を構築し,生産活動は全地球規模でなされるグローバリゼーションの様相を呈する国際的・超国家的事業へ進展している。この世界規模の製造がグローバル生産で,生産戦略の1つと認識される。 日本では,為替レートの変動と国内労働賃金の高騰のため,発展途上国の低廉な労働賃金を利用し,また貿易摩擦解消や保護貿易(関税),それにローカル・コンテント規制の動きのために海外投資が近年活発になった反面,国内の"産(工)業空洞化の懸念"が指摘される。 生産のグローバル化は,次の3つの尺度で評価される。 ●輸出比率(%)=(輸出量/国内生産量)×100 ●海外生産比率(%)=(海外生産額/(国内生産額+海外生産額))×100 ●海外依存度(%)=((輸出量+海外生産量)/総生産量)×100 国際生産に当たっては,生産・販売拠点の国際配置と供給の意思決定をし,主要な部品を国内で作って海外で製品を組み立てる様式,普通部品を海外に依存して国内で製品組立を行う様式など,いわば国際分業による生産,海外進出企業による現地生産,そして生産-輸送-販売の国際的物流システムの確立が肝要である。 しかし、これからの生産システムは,国家の中央集権体制から離脱して特定の地域で地方分権的に発展することが大切で,これが全産業部門参加体制による自立型の社会的生産システム・産業ネットワークである。第一次産業の農業・第二次産業の製造業・第二次産業のサービス業から構成される。それぞれが自立・自律的に最適の生産体制を構築しながら,これら異質の分野が相互関連的に共働して相乗効果を挙げ、地域杜会に貢献することが希求される。 原料・エネルギなどの投入物もできるだけ各地域で確保し,生産・消費も主にその地域に必要なものに限る方式が究極的な課題であり,これが適地適正生産のあり方といえる。
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