本年度の前半は、企業インタビュー、資料収集、文献レビューを中心に行った。企業インタビューは、日本国内の製造業(自動車、電子部品、電気製品、化学)およびサービス業(商社、運輸)の大手日本企業を10社、大手外資系企業2社を対象に行った。ただし、10月に予定していた米国でのインタビュー調査は、9月に起こったテロ爆発事件のため、見合わせざるを得なった。日本国内でのインタビューの結果、日本企業の情報共有に大きな影響を与えてる企業情報システムとしてERP(Enterprise Resource Planning)の重要性が明らかになった。ERPは1990年代後半から日本企業で導入が進んでいる市販のパッケージソフトで、企業の人事、経理、製造、販売、購買の情報を全社的に統合する情報システムである。現地通貨・現地言語に対応するため、必ずしも社内言語を英語に共通語化する必要がなく、ERPのグローバルな展開は企業の情報共有の効率を高めると考えられる。しかし、ERPによってトヨタ式生産システムなどの企業個別に開拓されてきた日本的生産システムなどの国際優位性が失われることにもなる。このような認識のもとに、今年度の後半は、ERPに焦点を当てて、日本企業がこれをいかに有効活用し、情報共有の効率化を高め得るかについて、文献や資料の検討を進めた。また、関連する学会や研究会にも参加し、知識を深めた。 また、今年度の前半には、2000年度から共同研究として行ってきた日本企業の国際経営と言語(言語)の関係についての実証研究に、当研究での知見を加え、研究成果を9月に本として出版した。 平成14年度は、実証研究からのデータをもとにモデル化や理論の構築につとめ、研究成果を順次論文にまとめ、また6月の組織学会全国大会などで、当研究についての報告を行う予定である。最終的には、本として出版することも検討している。
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