1.平成9年3月期までは、銀行の貸倒処理および貸倒引当金設定は大蔵省の許可を得て行われていたが、平成10年3月期からは「資産の自己査定」制度が導入され、貸倒処理および貸倒引当金設定は銀行の自己査定によることとなった。 2.平成10年3月期における貸倒引当金のための会計基準を考察した結果、未整備であったため、各銀行の貸倒引当金は一定の合理的範囲内に収まるのは困難であったとの結論を得た。 3.その後、金融検査マニュアルが公表され、貸倒引当金の会計基準の整備が図られたが、会計基準の体系化および監査基準と会計基準との区別等、問題点をはらんだままであるとの結論を得た。 4.1986年から2003年までの米国金融機関規制当局の貸倒引当金に関するステートメントを、証券取引委員会や公認会計士協会の見解、ならびに財務会計基準審議会の基準書や見解と比較、考察した。 5.金融機関規制当局は、1993年以降、金融機関の貸倒引当金の会計処理についてステートメントを共同して公表するようになり、1998年からはSECも加わり、投資家保護と金融機関の監督の両方の見地から、貸倒引当金の会計処理に対して規制が行われるようになった。 6.しかし、金融機関規制当局とSEC、さらにはAICPAとは貸倒引当金の会計・監査に関して必ずしも見解が一致しているわけではないことが明らかになった。 7.平成14年3月期後のわが国の状況、ならびに米国の経験から得られるわが国の会計・監査制度への示唆の考察は今後の課題である。
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