本報告書(comparative Study of Asian Management Accounting)は、シンガポール、タイ、マレーシアにおける日本進出企業と現地企業に対して共通の質問項目と様式を内容とするアンケート表を作成し、ほぼ同時期に上記3ヶ国で調査を実施し、その調査結果を同じ分析方法で(SPSSを用いて)、同じ整理の仕方で纏めたものである。日本進出企業には1294社に送付され、65社からの回答をえたが、その他の国では回収率は比較的高く、全体的な調査結果は十分信頼できるものとなった。 日本進出企業の管理会計については、幾つかの特質を確認することができた。つまり、中央集権的な意思決定システムのもとでの予算管理の徹底化、財務会計、実際原価計算、標準原価計算CVP等の伝統的な管理会計手法を用いての日本的な経営課題(低原価と高品質との統合、迅速な納期、顧客も満足度、全員品質管理等)の遂行、利益・売上高等の絶対額基準による業績評価、この管理会計実践はアジアとの近似性を持ちながらも、日本国内の企業との差異を有している。さらに、報告書は、アジア上記3ヶ国における現地企業の管理会計の実態を明にしているばかりか、アメリカ多国籍企業と日本多国籍企業、現地企業における管理会計実践の相違をも明確にしている。例えば、アメリカの場合はABCに傾斜しているのに対して、日本の場合は目標原価に傾斜している。 本報告書は、より広い範囲でのアジアの管理会計実践の比較を可能とするために、韓国、中国、日本(電子企業)の管理会計について特別に寄稿を依頼し、それらの原稿を掲載している。本報告書は英文で作成されていることもあり、すでにアジア諸国はもとより、イギリス、ポーランドの研究者から高い評価を受けている。したがって、今後さらに全体的な比較分析を行い、完成し書物の形で発表することが計画されている。
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