元々の期待ギャップの問題が、外部監査人が行っている監査と有価証券報告書(年次報告書)のユーザーが期待している監査とのギャップとの相違である。それらは企業の不正経理のスキャンダルとして我が国においても、昭和40年代から大きく問題となり、スキャンダルの度に会計に関する法律は改正され、監査基準もまた改正されてきた。かかる意味ではギャップ問題は監査の発展の原動力でもある。それだけでなく、期待ギャップの問題は、会計についてのギャップでもあるし、伝統的な監査と情報監査といわれるもののギャップでもある。今回の研究の柱の一つは、アンケートを通して、外部監査の現状と将来、監査人の役割と能力、外部監査方法の変化、外部監査の制度的枠組み等について、公認会計士と日経500社との理解を知ることである。それはもとより不正に関わる期待ギャップだけでなく、外部監査の将来像、監査制度についても両グループの理解と期待の同一と差違を抽出することであった。 それとともに研究分担者は、我が国を例にとり、企業の不正経理の発覚を契機として、監査制度や監査技術、監査組織が発展してきたことを詳細に検証している。また監査というものが会計監査の領域から、情報監査へとさらの拡大されてくるにしたがって、監査という概念そのもの、監査の呼称が変化し、当初の不正問題から、拡張されてきていることを分析、抽出している。さらに情報技術の発展と普及によって、ギャップを解消するために監査は継続化、オンデマンド化しなければならないこと、そしてそのための制度的改革の提言を行っている。
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